2010年11月30日火曜日

ドリームクラブゼロのシナリオ制作費が未払い?

発売延期が発表された「ドリームクラブ ゼロ」について、シナリオの未払いで裁判沙汰になっていることが分かりました。

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 「ドリームクラブ ゼロ」発売延期の真相か、シナリオ制作費未払いの件についてTeam N.G.Xにインタビュー(Gigazine)

 

◆ドリームクラブとは?
ピュアな心の持ち主だけが入店できる大人の社交場「DREAM C CLUB」の会員となり、店で働く「ホストガール」との恋愛をすることが目的の恋愛シミュレーションゲームです。

 

つまりキャバク・・・げふんげふん、大人の社交場を舞台とした恋愛シミュレーションなのですが、前作が結構売れたようで続編作った訳ですが、思わぬところに落とし穴がありました。

まず会社の関連ですが、「ドリームクラブ ゼロ」の販売はD3パブリッシャーで、制作がタムソフト、そしてシナリオ制作をタムソフトより委託されたのがTeam N.G.Xという関係になっています。

で、そのTeam N.G.Xとタムソフトが現在係争中のようです。

 

問題は以下の2点

  • シナリオを書いた分のお金が払われていない
  • 係争中のシナリオがタムソフトからディースリー・パブリッシャーに納品されてしまった

 

シナリオ代の半金は前金として既に支払われており、残りが未払いとなっている。未払いである以上著作権はまだTeam N.G.X側にあると主張している。そんな状態でタムソフトはD3パブリッシャーにシナリオを渡してしまって、発売発表までやっちゃった。こんなとこかな。

 

NGX:
1作目は一切関わっていません。僕たちが担当したのは「ドリームクラブ ゼロ」のシナリオの仕事として契約したものだけです。

 

1作目のドリームクラブの制作にもタムソフトは加わってますので、シナリオ担当が変更になったってことですよね。1作目は自社のシナリオライターだったのか、別の会社に委託していたのかは知りませんが、そもそも何故1作目と同じところにシナリオを任せなかったのでしょう。断られたんでしょうか?シナリオライターの確保は難しいという話はよく聞きますが・・・。

内容ほとんど同じシリーズもので、シナリオライターだけ別ってどうよ?

 

G:
シナリオ自体は完成しているわけですか?

NGX:
完成自体についてもモメているんですが、その途中で支払についても問題が発生し、お金が払われていない状況ですね。

 

外部委託ってこういう問題が出るから厄介なんですよね。完成自体でモメるってのはソフト開発の世界では珍しいことではありませんが、事前に成果物についての取り決めが曖昧になっているのと、コミュニケーション不足が原因となることは多いです。

 

NGX:
契約時の話までさかのぼるのですが、まず2009年9月に「2.5MBの仕事を」(=シナリオを書いたテキストファイルのファイルサイズが2.5メガバイトという意味。日本語の全角1文字で2バイトなので、2.5メガバイトは大体262万1440バイト、約131万文字という膨大な分量のシナリオとなる)ということで依頼がありました。

 

最初は2.5MBの作業量だったわけですね。

 

まず、「総シナリオ量は約4MBだが、2MBは前作シナリオを流用する。バッファ(余裕分)500KBをもって、書かなければいけないシナリオ量は2.5MBだ」という話をされました。

 

この「シナリオを流用」ってところにトラブルのフラグ臭がほんのりと・・・

 

この見積で契約したのですが、前作からの流用分が無くなってしまったんですね(=前作のシナリオから一切流用しないでくれということになった、ということ)。

 

で、話が変わってしまった・・・と。

この時点で作業量が別物になってしまっているので、契約の再変更が必要です。最初の契約内容と別物じゃないですか。ここでクライアントと十分な話し合いをしなければ、トラブルに発展する確率が跳ね上がる局面です。

 

NGX:
この業界ではライターからお金の話ってほとんどしないんです。シナリオの量もどのくらい増えるのか分からないし、後でまとめて請求しようと思っていたんです。

 

どうなってるの、この業界。

「シナリオの量もどのくらい増えるのか分からない」では、そもそも「2.5MB」や「4MB」で契約するということ自体が不可能ではありませんか。確かに、プログラムの世界でも作業量の正確な見積もりは困難でしばしばプロジェクトがデスマーチ化しますが、しかし「お金の話ってほとんどしない」なんてことはありません。

正確な見積もりが困難であるなら、なおさら予定変更時のトラブルに備え「お金の話」をクライアントとしっかりしておくべきです。

 

2010年3月、シナリオが終わるめどが立つ段階に入り、計算で4.5MBくらいになることが見えてきました。それで実際にタムソフト側へ確認をしてみると、「そんなのお前が水増しすればいくらでもできるだろ」と言われました。

 

こういうことになっちゃう訳ですよ。

「シナリオが終わるめどが立つ段階」って、そんな段階になるまで見積もりの概算値もでなかったのでしょうか?もっと早い段階で「5MB」くらいになりそうだとかタムソフトに伝えていれば、こんな話になってないんじゃないですか?

9月に最初の話があって翌年3月ですから期間半年ですよね。その間タムソフトと話し合うチャンスは何度もあったはずですが、「この業界ではライターからお金の話ってほとんどしない」という業界の常識・世間の非常識に縛られてお金の話を避けてきたんでしょうか。

 

タムソフト側としては、シナリオの増えた分は僕らが勝手に増やしているという話になっているんですね。追加発注分となるのであれば、僕らが先に見積を出すのが当然という主張をしているんです。

追加発注が行われるべき時に追加分の見積を出してこなかったのだから、最初の見積の金額でやるべきだ、ということですね。でも、そもそも流用をやめたのは僕らじゃありませんし、それが契約書に書いてあるなら気付きます。

 

そもそも「流用やめる」ことになったのはどの段階なんでしょう。

少なくとも、その事実が判明した時点で「見積」は出さなきゃマズいでしょう。「お金の話を避ける」からこういうことになる。ああ、プログラム業界にもありふれた話なので頭が痛い。

 

NGX:
シナリオ制作のペースは後半になるほど上がっていくものなので、3月12日の時点で最終的にタムソフト側へ提出したものは3.5MB強でした。その時点ではまだ決まってない仕様がたくさんあったんですよ。

G:
シナリオがかなり進んだ段階でもまだ決まっていないものがあるんですね。

NGX:
結構たくさんありますよ。例えば「温泉イベントがある」ということは(2010年の)年明け前後に聞きました。それ以前はそういうイベントがあるのか無いのかも分からなかったんです。分からない以上、そういうシーンは書けないですよね。

 

これはツライところですね。Team N.G.Xに同情しますが、こんな事態になってるならなおさらタムソフトと「お金の話」をせねばならない局面でしょう。

プログラム開発においても、仕様変更・新規要望は当然のようにあります。しかし、その内容が当初の契約分を逸脱したならば、クライアントと契約の再確認・見直しをせねばなりません。下請け会社は立場的につらい部分はあるのですが、なにせプロジェクトの成否に関わることなので、この局面で尻込みしてはならないのです。

 

この状況で、タムソフト側の主張は「Team N.G.Xがシナリオの締切を再三延期させている」ということになっています。

 

ひでぇ~。

タムソフト側の意見も聞きたいところですが、初期段階でどの程度プロットが固まっていて、仕様変更・新規要望が全体の何%程度あったのかが気になります。

もしTeam N.G.Xのシナリオを見ながら、タムソフト側がプロットを随時作成・変更とかしてたら悲劇ですね。まるでWeb系開発現場のよう。

 

NGX:
11月末時点で半金を払ってもらってるんですが、残りの半金は払わない、と。「全部書き終えて当初の金額をもらうか、現在の段階でやめて半金で終わるか」の2択しかないというんです。

ここで急にタムソフトが新たに出してきた主張があって、「シナリオの出来が悪いから、金は払えない」と言ってきたんですよ。「修正に手間がかかっているのでその分を考慮して欲しい」ということでした。

 

これは駄目でしょタムソフト。シナリオの良し悪しは早い段階で認識していなければならないし、少なくとも終盤にになって金銭トラブルが発生してからこんなことを言い出すのは言いがかりにも程があります。

 

今回Gigazineの記事自体はTeam N.G.X側の一方的な主張が載ってるだけですが、一通り見て双方に問題があるなと感じました。

よく「コミュニケーションは大切」と言葉では使われるけど、実際にそのコミュニケーションを徹底するというのは難しいことですよね。「日本人の信条は察しと思いやりだからよbyミサト」というのはステキな話だが、それがビジネスの現場で通用するほど甘くも無く、やはり「口で言わなきゃ分からない」を信条に交渉にあたるべきなのでしょう。

 

まったく・・・ピュアじゃねぇ話だぜ!