最近、日本のゲーム業界が弱っているというのは多くの人が感じていることだと思います。
ゲームの面白い面白くないの話ではなく、「ビジネスの視点からゲーム業界は利益が出しづらくなっている」という話です。ハードウェアの高性能化による開発費の増大、海外勢との競争、ソフトの不正ダウンロードなど様々な原因がありますが、今回は「人材(プログラマ)」という視点から、日本のゲーム業界の現状を考えてみたいと思います。
技術者にとってゲームプログラマは魅力的ではない?
アメリカの場合、ゲーム開発はプロデューサよりもプログラマの方が給与が高いケースが少なくありません。専門性の高い分野ほど賃金も高くて当然という考えですね。それに対し、日本の場合はゲームプログラマの給与が管理職に比べ低いのが当たり前という状況になっています。
プログラマ間においても、一般的なオープン系・Web系のプログラマに比べ、ゲームプログラマの給与水準は低いものとなっています。そんな状態なものですから、優秀な人材ほどゲーム業界を避ける傾向にあります。仮に優秀なゲームプログラマが現れたとしても、その優秀さ故にディレクタ→プロデューサと昇進していき、プログラムの現場から離れていってしまいます。
その結果、現在の高性能ハードの性能を生かしきるに足る人材が不足しているのです。実際、PS3やXBOX360用ソフトの開発に対応できる優秀な人材は大手のデベロッパーに独占されており、中堅デベロッパーには人材が回ってこないという状況になっています。
国内のゲーム開発はライト指向へ
PS3やXBOX360等のプラットフォームをターゲットにすると国内だけではペイできない。かと言って、海外でも勝負できるソフトを作れるデベロッパーはごく一部。国内だけで勝負するなら、PS2に毛の生えた程度のゲームにならざるを得ない。よし、最新技術を追うのをやめよう!時代はライト指向だ!
ということで最近盛んなのが、iPhoneやDSなどの携帯ゲームやブラウザゲームのような低コストで開発が可能な分野です。これなら高い技術力も要求されないし、海外勢とのガチンコバトルの避けられるということでこの分野への参入が相次いでいるわけです。実際にソーシャルゲーム等の世界では月数千万円の売り上げを叩き出している例がいくつもありますので、そんな世界を見ると、高いリスクを背負ってまで高スペックなプラットフォーム上で勝負しようというのがバカバカしくなるってもんです。
ただ、「参入障壁が低い世界」は「競争が激化する世界」でもあるので、今は利益が出ていてもそのうち採算が合わなくなる可能性があります。
オフショア?何それオイシイの?
国内ではなく、人件費の安い海外にプログラムを任せるというケースが増えてきています。これはゲーム業界だけではなくてソフトウェア開発業界全体に言える話です。実際、IT企業に就職した新入社員の多くが、いきなりSE(システムエンジニア)として雇われていたというケースを新人研修を通じていくつか見てきました。つまり、自社でプログラムやらなくなってきているんです。
こうなると国内のプログラマが育たなくなってしまいます。
特に大規模なオンラインゲームとなると国内での開発は絶望的な状態です。国内には、大規模オンラインゲームのパブリッシャーは多くありますが、デベロッパーがほとんどないのです。今後も増える見込みはありません。企業からするとブラウザゲームの方が余程おいしく見えますしね。
つまり
国内にはゲームプログラマを軽視する環境が完璧なまでに出来上がっているということです。